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事業者間遠隔点呼とは?遠隔点呼との違いや先行実施要項についても解説|IT点呼キーパー

事業者間遠隔点呼とは?
遠隔点呼との違いや先行実施要項についても解説

法改正・規制
  • 事業者間遠隔点呼とは?遠隔点呼との違いや先行実施要項についても解説
  • 人口減少に伴う労働力不足が進む中、重大事故撲滅のために業務量が増加する点呼。

    点呼が重要なのはわかるが、正直人も時間も足りないと悲鳴をあげている事業者の方は多いのではないでしょうか。


    国もこうした声に対応すべく、さまざまな点呼制度の創設・変更を行っています。今回ご紹介する事業者間遠隔点呼もその1つです。


    本記事では、事業者間遠隔点呼の概要と現在行われている先行実施の進捗状況、今後の予定などを紹介します。

    事業者間遠隔点呼は点呼の業務効率化に向けて大きな期待が寄せられている制度です。本記事で情報収集を行い業務効率向上策の選択肢を増やしておきましょう。

事業者間遠隔点呼とは?

事業者間遠隔点呼とは?

事業者間遠隔点呼とは、運行管理者と運転者、それぞれが所属する事業者の資本関係が100%未満、またはまったく資本関係がない事業者間で行われる遠隔点呼です。


点呼はある事業者の営業所に運行管理者を置き、点呼業務に従事させる形態が基本です。
しかし、慢性的な人手不足により、一部の中小企業では運行管理者を置くこと自体が難しくなっています。


運送事業者へのアンケートでも、半数以上の事業者が事業者間遠隔点呼の実施を希望する結果が出ています。


運送事業者へのアンケート

出典:事業者間遠隔点呼について|国土交通省(参照2025-01-31)


事業者間遠隔点呼が実現すれば、自社間または自社と完全子会社間という現在の遠隔点呼における制約が無くなり、業務負担が減る事業者の増加が見込まれます。


また、点呼業務を専門に請け負う会社の設立が可能になり、新たな雇用を生み出すきっかけにもなります。


こう聞くと早く始まってほしいと願う事業者の方もいらっしゃるでしょう。
実は事業者間遠隔点呼は令和5年11月から先行実施という形ですでに始まっています。詳細は後述します。

遠隔点呼との違いは?

ところで、遠隔という言葉が入っているのでIT機器の使用が必須というのは想像できますが、事業者間遠隔点呼はすでに導入されている遠隔点呼とは何が違うのでしょうか。

結論を申し上げますと、両者の違いは運行管理者と運転者の関係にあります。


令和6年3月に発出された「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示の一部を改正する告示(令和6年国土交通省告示第278号)」により、遠隔点呼を行うには運行管理者と運転者に以下のいずれかの関係性が求められます。

  • 運行管理者と運転者は同一事業者内に所属していること
  • 運行管理者と運転者の所属事業所が異なる場合、2つの事業者の資本関係が100%であること

また、点呼実施場所については、営業所と車庫以外に業務を行う事業用自動車内や待合所、宿泊施設等での実施も認められ、より遠隔点呼が行いやすくなりました。


遠隔点呼については、こちらの記事でもご紹介していますのであわせてご覧ください。


一方で事業者間遠隔点呼にはこの縛りがありません。
事業者間遠隔点呼ではやや極端な例ですが以下のようなことも可能になります。

  • バス会社の運行管理者がタクシー会社の運転者の点呼を行う
  • 自動車運送事業未経験の会社が点呼業務を行う

出典:令和6年国土交通省告示第278号|国土交通省(参照2025-01-31)

事業者間遠隔点呼を実施するメリットとは?

事業者間遠隔点呼を実施するメリットとは?

ここでは、事業者間遠隔点呼を導入するメリットを紹介します。

事業者間遠隔点呼を導入すると、従来の一事業者内での点呼では起こらなかったメリットを享受できますので、ぜひご覧ください。

効率的な運行管理が可能になる

事業者間遠隔点呼を導入すると、点呼業務を別会社に委託でき自社で運行管理者を育成する時間とコストを節約できます。また、点呼に使用する機器・システムを受委託事業者間でシェアすることで、さらにコストを抑えた点呼運用が可能です。


事業者間遠隔点呼によって労力・コストが減り効率的な運行管理が期待できます。

地域連携の強化につながる

労働力の都市集中により、地方の事業者は運行管理者の確保が特に難しくなっています。

同一地方の事業者同士で事業者間遠隔点呼を行えば、点呼はもちろん点呼以外の業務でも連携が図れる可能性が出て、労働力不足の改善が期待できます。

データの共有による運行管理の改善につながる

事業者間遠隔点呼を導入すると運行管理を行う事業者はさまざまなケースに対応することになります。


運行管理を行う事業者は経験とデータから新たな知見が得られ、運行管理を依頼する事業者もデータを共有してもらうことで、自社で効率よく点呼を行いコストを削減する道を模索できます。

事業者間で点呼に関する情報を共有することで、双方の運行管理業務の質向上が可能です。

運行管理者の負担軽減になる

運行管理者は事業所の営業時間中、常駐させなければなりません。
24時間稼働の事業者では大きな負担で、人員不足と人件費増加の原因の1つとなっています。


ところが、事業者間遠隔点呼を活用すれば自社で運行管理者をすべて賄う必要が減ります。

例えば、昼間は別の事業者に点呼を依頼し、依頼先が少ないと予想される夜間のみ自社で運行管理者を確保するといった運用が可能です。


事業者間遠隔点呼を導入すると自社の運行管理者の負担を軽減できます。

夜間や休日の対応も可能になる

事業者間遠隔点呼を導入すれば、それまで業務がまったくなかった時間帯に業務を行うことになっても、比較的簡単に運行管理者を確保できます。


例えば、今まで昼間にしか稼働しなかったA社が業務拡大に伴い夜間の稼働を始めるとします。

ここで夜間に稼働しているB社と事業者間遠隔点呼の提携を行えば、B社の運行管理者がA社の運転者の点呼を行えるので、A社は新たに運行管理者を用意する必要がありません。


これだけですとB社の運行管理者の負担が増えてしまいますが、両事業者の稼働時間が重なる時間帯においてA社の運行管理者が業務を行うこととすれば、B社の運行管理者の負担増を抑えられます。


事業者間遠隔点呼を活用すれば、事業拡大による夜間・休日稼働への対応も可能になります。

事業者間遠隔点呼を実施するうえでの課題

事業者間遠隔点呼を実施するうえでの課題

事業者間遠隔点呼には新たなメリットがある反面、他の点呼にはない独特の課題もあります。

ここでは、事業者間遠隔点呼特有の課題にフォーカスします。

責任の所在の明確化

事業者間遠隔点呼では、点呼の委託事業者と受託事業者の間で事故等に対する責任の所在を明確にしておく必要があります。責任の所在や過失割合などが決まっていないと、いざトラブルが発生した際に責任の押し付け合いなどの原因になるからです。


導入前に講じておくべき対策の例を挙げますので、参考にしてください。

  • 事故別に責任の所在や過失割合を決めて、契約書や合意書など書面による確認をする
  • トラブル時の対応手順に関するマニュアルを事前に作成、従業員に周知する

コストの問題

導入費用、ランニングコストの負担割合についても、事業者同士で取り決めを交わしておく必要があります。


専門会社などまったくの外部に点呼業務を委託する場合、使用する機器やシステムを指定される可能性があります。
サービスは魅力的だが導入コストが高いなどの問題が浮上するかもしれません。


コストについても責任の所在と同様に、契約書など書面に残しておくとよいでしょう。
また、助成金制度が活用できれば初期費用の負担軽減が可能です。

運行管理システムの標準化

事業者間で使用するシステムが異なる場合、互換性がないとデータの一元管理やシェアが難しくなる可能性があります。


対応策の例としては、現在使用しているシステムのうち、どちらかの事業者が国や業界団体が推奨するシステム・機器を使用している場合はそちらに統一する方法があります。


仮に両事業者ともそのようなシステムを使用していない場合は、多くの事業者に利用されているシステムへの入れ替えも視野に入れましょう。使用例が多い機器ほど、トラブルへの対応が容易でコストと時間の節約が可能です。

事業者間の関係性の構築

事業者間遠隔点呼では当該事業者の間で一定の信頼関係が構築されていないと、点呼そのものがスムーズに進まなくなります。


信頼関係がないと起こり得る事象の例

  • 個人情報の流出
  • 情報の伝達方法や内容が形骸化し正確性が担保されない
  • 運行管理者の指示に運転者が従わない

対応策としては、定期的にミーティングを行うのがおすすめです。


ミーティングで行う内容の例

  • 点呼方法を再確認、運転者への意識づけによって確実な実施につなげる
  • 点呼に関する意見交換を行い、さらなる効率化につなげる
  • 点呼結果を共有し、業務内容と遂行状況を明確にする

オンライン業務による意思の疎通は対面時より図りにくいので、報連相を徹底するなど普段から意識する必要があります。

事業者間遠隔点呼の先行実施とは?

事業者間遠隔点呼の先行実施とは?

事業者間遠隔点呼は2023(令和5)年11月から先行実施形式で導入されています。

他の点呼でもよく採用される「先行実施」とはどのような制度なのでしょうか。


ここでは先行実施の概要と、事業者間遠隔点呼における実施状況などについて紹介します。

事業者間遠隔点呼の先行実施状況

先行実施とは、制度の「試運転」と思ってください。

新しい制度は要領の作成など入念な準備を行ったうえで導入されますが、それでも実際に運用して初めて気づく不備等の発生を否定できません。


そこで、いきなり制度を開始するのではなく、実施事業者を限定して一定期間運用し、問題がなければ本格運用へ、改善点が見つかった場合は然るべき対策をしたのち正式に運用を始める形を取っています。
これが先行実施の大まかな概要です。


事業者間遠隔点呼の先行実施期間は最長で2025(令和7)年3月31日までの予定で、最終的な調整・確認を経て本格運用される予定です。

詳細は国土交通省発出の事業者間遠隔点呼の先行実施状況に関する報告をご参照ください。

出典:事業者間遠隔点呼の実施状況・要件案について|国土交通省(参照2025-01-31)

先行実施事業者が感じた効果

先行実施事業者が実際に事業者間遠隔点呼を行って感じた効果の一部を紹介します。

  • 機器・システムの導入で、点呼の質が向上・確保された
  • 点呼記録のクラウド保存により、記録の確認・管理が楽になった
  • 事業者間の上下関係など点呼のやりにくさを指摘する声もあったが、対価が発生していることもあってか、予想以上にスムーズに点呼が行えた
  • 現状の人員で点呼を無理なく行えるようになった
  • 運行管理者の労働時間削減など、労働環境の改善・業務効率化が図られた

先行実施においては、事業者間遠隔点呼に好感触を得た事業者が多いと言えます。

令和6年度の先行実施で追加した事項

一方で、異なる事業者間での点呼ならではの課題も見えてきました。
多かったのが運転者の健康状態の把握に関してです。


オンライン点呼では、対面点呼と比べ運行管理者が運転者の様子を正確に把握できない可能性があります。

そこで令和6年度の先行実施要領には、下記の2点を追加し検証を行っています。

  1. 点呼時に体温と血圧を測定し、運行可否の判断材料とすること
  2. 事業者間遠隔点呼を行うことで運転者が所属元の運行管理者とコミュニケーションを取る機会が減る場合は、1か月に1回を目安に対面による直接会話の機会を設けること

今後のスケジュールについて

今後は先行実施中の事業者から引き続き実施状況などの報告を受けて、令和7年春からの本格運用に向けて要件の取りまとめを進める予定です。

今後のスケジュール案は下記の通りです。


今後のスケジュールについて

出典:事業者間遠隔点呼の実施状況・要件案について|国土交通省(参照2025-01-31)

まとめ|事業者間遠隔点呼で業務効率化を実現しよう

まとめ|事業者間遠隔点呼で業務効率化を実現しよう

点呼については、今回ご紹介した事業者間遠隔点呼のほかに業務前自動点呼の導入も進められており、従来の制度に加えて点呼の外部委託や完全自動化など、点呼の選択肢が増える見込みです。


事業者間遠隔点呼は導入に費用と手間がかかりますが、軌道に乗ればコスト以上の恩恵が受けられる可能性が高い制度です。

今後も続くと予想される人員不足に負けない業務効率化の一手段として、本格運用を前にさらなる情報収集と準備を進めてはいかがでしょうか。


事業者間遠隔点呼に関する詳しい情報はこちらからダウンロードできます。事業者間遠隔点呼について、もっと深く知りたい方はぜひご活用ください。


また、テレニシでは、IT点呼キーパーへの事業者間遠隔点呼機能の搭載について検討を進めております。現時点では、機能の実装時期は未定ですが、最新情報や詳細についてご関心のある方は、下記フォームよりお問い合わせください。


【出典】
事業者間遠隔点呼の実施状況・要件案について|国土交通省(参照2025-01-31)
事業者間遠隔点呼について|国土交通省(参照2025-01-31)
令和6年国土交通省告示第278号|国土交通省(参照2025-01-31)

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